この論文では特異チャートについて、ノード・ペアを削除するという操作だけで自明に変形できるかという問題を考えた。結果として、特異チャートの次数によることが分かった。すなわち、次数が4で自明にできない反例を挙げ、一方、次数3以下では自明にできるという証明を与えた。ちなみにこの反例が表す特異曲面結び目は、4個の球面のはめ込みであって、各成分が球面の自明な埋め込みになっている。
特異チャートでは、2価頂点をノードという。一辺でつながれたノード2つのペアをノード・ペアというが、特異チャートでは、ノード・ペアを付け加えるという操作と、削除するという操作が考えられる。ノード・ペアを付け加えるという操作は特異曲面結び目の交差交換という操作に対応しており、削除するという操作は特異曲面結び目の交差交換の逆操作に対応している。任意の黒い頂点のない特異チャートは、ノード・ペアをいくつか付け加えたり、削除したりすることによって、自明に変形できることが知られている。ここで、黒い頂点(black vertex) とはチャートの1価頂点であり、単純曲面ブレイドのブランチ点に対応している。ちなみに、通常のチャートで黒い頂点がないものは、はじめから自明である。