この論文では絡み目群が自由アーベル群である曲面絡み目について考察した。1次元の絡み目の場合は状況は単純である。1次元の絡み目群が自由アーベル群であるとき、そのランクは2以下であり、ランク1なら自明な結び目、ランク2ならHopf linkでそれはlinking numberで決定されることが知られている。しかし、曲面絡み目の場合は複雑な性質が現われる。
まず、そのような曲面絡み目について、その種数と絡み目群のランクの間にある不等式が成り立つことを示した。また、絡み目群がランク4の自由アーベル群になるT^2-linkの無限個の例をトーラス被覆絡み目で構成した。無限個であることは、double linking number とtriple linking number を計算することによって示すことができた。ここで、double linking number とtriple linking numberは曲面絡み目のlink homotopy 不変量であり、曲面絡み目のlink bordism classを決定することが知られている。さらに、命題として、同じdouble linking number および triple linking numberを持つT^2-linkであっても同値でないものが存在することを示し、別の命題として、ランクに対して比較的種数が小さい曲面絡み目を構成した。