学習院大学トポロジーセミナー (Topology Seminar, Gakushuin University)


過去のセミナー記録
2015年度のセミナー
(※※世話人:2015.8.〜2016.3: 中村伊南沙
2015.4.〜2015.7.: 中村信裕)

今後のセミナー予定
日時:2016年1月20日(水)13:30-15:30
場所:学習院大学南4号館205号室
講演者:志摩亜希子(東海大学)
講演題目: C-minimal chart の性質
アブストラクト:
4次元空間に埋め込まれた曲面(曲面絡み目)を表す方法として、鎌田氏によ りチャート(chart)というものが定義された。チャートの頂点は3種類あり、次数 が4の頂点を crossing、次数が6の頂点を white vertex と呼ぶ。本講演では、 crossing を含まない領域について、いくつか分かった性質があるので、それら について紹介したい。その応用として、次の定理が証明される。
各成分が球面である曲面絡み目を 2-link という。2-link を表すチャート を 2-link chart という。C-minimal 2-link chart が高々3つの crossing しか 含まないならば、次のいずれかにチャート変形同値である。(1) リボンチャート (white vertex のないチャートにチャート変形同値なチャート)か、(2) `2ツイ ストスパン3葉結び目'を表すチャートとリボンチャートの積。
また、2-link 4-chart や 2-link 5-chart が丁度4つの crossing を含むな らば、C-minimal chart でないことも示されている。この研究は永瀬輝男氏(東海大学)との共同研究である。


日時:2015年12月4日(金)13:30-15:30
場所:学習院大学南4号館202号室
講演者:山田裕一(電気通信大学)
講演題目:Exceptional Dehn surgeries along the Mazur link
アブストラクト:
双曲的多様体の境界にトーラスがあると,そこにソリッドトーラスを貼り合わせる(Dehn filling)ことで 双曲的多様体でなくなる現象があるが,そのような貼り合わせ方(手術係数)は1つの多様体に対して 高々有限個であることが示されていて「例外的デーン手術」と呼ばれる. Mazur link は成分を交換する対称性を持つ2双曲的絡み目で,可縮だが球体ではない4次元多様体 The Mazur manifold を与える図式として知られる.うまく手術係数を選べば,レンズ空間さえ現れる.そこで, その他のデーン手術とその分布を調べてみた.手法は,The minimally twisted five chain link について計算機数学の進展で得られた Martelli-Petronio-Roukema の成果を利用する.いくつかのよく知られた例外的手術に関係することも見逃せない.


日時:2015年11月27日(金)13:30-15:30
場所:学習院大学南4号館202号室
講演者:粕谷直彦(青山学院大学社会情報学部)
講演題目:$R^4$上のケーラーでない複素構造の構成
アブストラクト:
「$R^{2n}$上にケーラーでない複素構造は存在するか?」という素朴な問題を考える。$n=1$では明らかに存在しない。 一方、$n\geq 3$ではつねに存在することが、CalabiとEckmannによって示されている。 しかし、$n=2$については我々の知る限り、答えは知られていなかった。 そこで今回、$R^4$上のケーラーでない複素構造を非可算無限個構成した。 構成は、松本幸夫氏と深谷賢治氏によって発見された種数$1$のアキラル・レフシェッツ束$S^4\to S^2$と$I_1$型楕円特異ファイバーの近傍の複素解析的モデルを 融合させることにより行われる。さらに、こうして出来た$R^4$に微分同相な複素多様体について、正則関数、有理型関数、Picard群、等に関する情報が分かる他、 いかなるコンパクト複素曲面にも埋め込まれない、等の性質を証明することが出来る。 この内容はAntonio J. Di Scala(Politecnico di Torino)とDaniele Zuddas(KIAS)との共同研究である。


日時:2015年11月6日(金)13:30-15:30
場所:学習院大学南4号館202号室
講演者:山本悠登(東京大学大学院数理科学研究科)
講演題目:トロピカル幾何学とモノドロミー変換
アブストラクト:
トロピカル幾何学とは、実数全体に負の無限大を付け加えた集合に、“加法”として2数の最大値をとる操作を、“乗法”として通常の加法を与えることでできる 半環上の代数幾何学である。このトロピカル幾何学の手法を用いることで、リーマン面のパンツ分解の高次元化として、滑らかな$n$次元複素代数超曲面を、 $n$次元のパンツに分解できることが知られている。 本講演では、トロピカル幾何学の基本的な考え方と高次元のパンツ分解がどのようにして構成されるかについて説明した後、それの応用として、 複素超曲面の一変数退化族のモノドロミーを具体的に記述する方法を紹介する。


日時:2015年7月10日(金)13:30-15:30
場所:学習院大学南4号館202号室
講演者:今野北斗(東京大学大学院数理科学研究科)
講演題目:The generalized Thom conjecture and Seiberg-Witten wall crossing
アブストラクト:4次元多様体の整係数2次ホモロジー群の元を与えたときに,そのホモロジー類を代表する曲面の種数の評価を問う「最小種数の問題」は,4次元トポロジーの古典的な問題である. 特に複素射影平面に対する最小種数の問題はThom予想と呼ばれ,長年の未解決問題であった. Kronheimer-Mrowkaは1994年に,登場したばかりのSeiberg-Witten理論を用いてThom予想を解決した. その後Strleは2003年に,自己交差数が正の曲面に対して,広範な4次元多様体のクラスで最小種数の問題を解決した. 本講演では,Seiberg-Witten理論のwall crossingと呼ばれる技術とその一般化を用いて,4次元多様体に自己交差数が$0$の曲面が複数個入っている場合に,新しいタイプの種数への制限が得られることを解説する. その応用として,Strleの定理の大幅に簡易化された別証明や,2つの曲面の種数の組への制限が得られることを紹介する.


日時:2015年6月19日(金)13:30-15:30
場所:学習院大学南4号館202号室
講演者:清水達郎(京都大学数理解析研究所)
講演題目:Graph flowとChern−Simons摂動論
アブストラクト:Chern-Simons摂動論は、3次元多様体とその上の非輪状な局所系の組に対する次数つき不変量を与える.

深谷賢冶氏は、graph flowとよばれる各辺がMorse関数の勾配曲線になっているようなグラフのモジュライを適切に数え上げる(Morse homotopyと呼ばれる手法)ことで Chern-Simons摂動論の1次の部分の類似物を構成する方法を提唱した. 渡邉忠之氏は局所系が自明な場合に深谷の構成を実現し,さらに高次の項のMorse homotopyによる構成も与えた.しかし一般の局所系に対してはいまだMorse homotopyによる構成は・ネされていない.

本講演では,graph flowが成すある種のグラフ複体を導入する. このグラフ複体をしらべることで,Morse homotopyを用いてChern-Simons摂動論を得るためには3次元多様体と局所系にある条件が要請されることを示す.


日時:2015年5月15日(金)13:30-15:30
場所:学習院大学南4号館202号室
講演者:木村満晃(東京大学大学院数理科学研究科)
講演題目: 無限ブレイド群の交換子部分群上の共役不変ノルム
アブストラクト:共役不変ノルムは2008年の論文でBurago-Ivanov-Polterovichにより導入された 概念であり, 交換子群における交換子長や, 微分同相群におけるフラグメンテー ションノルム等の一般化にあたるものである. 群が如何なるノルムを許容するかを群の性質と考える. ノルムが安定(非)有界と は, その安定化が(非)自明となることをいう. 群が安定非有界なノルムを許容す る場合として, 交換子長が安定非有界となる場合が典型的である. そこで上述の 論文において「安定非有界なノルムを許容するが, 交換子長は安定有界であるよ うな群は存在するか?」という問いがなされた. この問題は川崎盛通氏および Brandenbursky-Kedraにより独立に解決されている. 本講演では, この問題への別解を与える. 特に, 川崎氏の手法を応用することに より$[B_\infty,B_\infty]$上に安定非有界なノルムを構成する方法について述 べる.


日時:2015年4月17日(金)13:30-15:30
場所:学習院大学南4号館202号室
講演者:浮田卓也(東京工業大学)
講演題目: Akbulut cork とエキゾチック多様体の種数 0 の Lefschetz fibration について
アブストラクト:近年 cork と呼ばれる Stein 曲面の一種によって様々なエキゾチックな多様体の対が構成されている。 本講演では Akbulut cork という cork に対してファイバーの種数が 0 の positive allowable Lefschetz fibration (PALF) の構造を構成する方法について紹介する。 また、Akbulut cork によって作られた無限個のエキゾチックな多様体の対にたいしても種数 0 の PALF 構造を構成し、その結果それぞれの微分構造の違いを写像類群の positive factorization で表した結果についても紹介する。

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