学習院大学トポロジーセミナー (Topology Seminar, Gakushuin University)


過去のセミナー記録
2016年度のセミナー
(※※世話人:中村伊南沙)

今後のセミナー予定
日時:2017年1月27日(金)13:30-15:30
場所:学習院大学南4号館419号室
講演者:牛島顕(金沢大学)
講演題目:低次元双曲多様体の一般型基本領域について
アブストラクト:
双曲多様体内に一点を定め、その点への最短線が2本以上取れる点の集合を用いて双曲多様体を切り開くと、「ディリクレ基本領域」と呼ばれる多様体の多面体分割が得られる。最初に定めた点を動かすとディリクレ基本領域の形状は変化するが、多面体として組み合わせ構造が点の摂動で変化しない場合、その基本領域を「一般型」と呼ぶ。双曲多様体内の殆ど至る所の点は一般型のディリクレ基本領域を構成することが予想され、2次元ではこの予想は肯定的に解決されているが、3次元では未解決である。この分野に関する研究の歴史を概説し、3次元の場合の問題解決へのアプローチを議論したい。


日時:2016年12月16日(金)13:30-15:30
場所:学習院大学南4号館202号室
講演者:吉田建一(東京大学大学院数理科学研究科)
講演題目:3次元双曲多様体に含まれる3点穴あき球面の合併について
アブストラクト:
3次元双曲多様体に含まれる本質的な3点穴あき球面は全測地的なものにイソトピックであることが知られている。本講演では、向き付け可能な3次元双曲多様体に含まれる全測地的な3点穴あき球面を全て考え、その合併の連結成分の位相型の分類を紹介する。これらの中には非常に特別な型もあるので、具体例を重視して説明したい。例えば、カスプが4個のもののうち体積が最小である双曲多様体や、カスプの3,5,6個のとき体積が最小であると予想されている双曲多様体には独特な3点穴あき球面の合併が現れる。


日時:2016年12月2日(金)13:30-15:30
場所:学習院大学南4号館202号室
講演者: 野坂武史(九州大学大学院数理学研究院)
講演題目: 双線形型式をとる球面上Lefschetz束の不変量
アブストラクト:
次の論文の概説し, アイディアを紹介します:arXiv:1611.04405v1. 主題は, 球面上Lefschetz束と呼ばれる4次元多様体論のクラスです. このクラスは写像類群から研究可能な2次元的様相の強いものですが, 私は3次元的見地からの研究法を勘案し, 不変量を構成してみました. 実際, Hopf束が橋渡しの鍵になります. 当不変量の興味深い点は, 双線形型式にとる点と, 写像類群の(中心拡大の)表現から構成できる点です. ですので, U(1)とSO(3)の量子表現で幾らか考察し, 幾らか結果(符号数やfiber和や強さなど)を得ました. 本講演では時間がありますので, 前半では私の結果を概説し, 後半ではアイディアや期待を述べたいと思います.


日時:2016年10月28日(金)13:30-15:30
場所:学習院大学南4号館202号室
講演者: 門上晃久(金沢大学)
講演題目: Maximal abelian torsion of Seifert fibered spaces
アブストラクト:
向き付け可能閉 3 次元多様体が 3 次元球面内の手術表示 (枠付き絡み目表示)されているとき、絡み目の絡み数や アレクサンダー多項式と、手術係数の情報から元の 3 次元 多様体のライデマイスター捻れ不変量(Reidemeister torsion)が計算される。
計算方法としては一見これ以上何も言うことがないように 見えるが、実際の場面では様々な困難が伴う。その 1 つ として、手術表示から不変量を計算する際手術公式を用いる が、慌てて一気に適用してしまうと 0/0、つまり不定形が 生じてしまう。その状況を避ける一つの方法を示したい。


日時:2016年9月30日(金)13:30-15:30 英語版はこちら
場所:学習院大学南4号館202号室
講演者:川崎盛通 (IBS Center for Geometry and Physics)
講演題目:Hofer幾何学、呉-Schwarzスペクトル不変量及びその幾何群論的一般化
Hofer's geometry, Oh-Schwarz invariants and their geometric group theoretic generalization

アブストラクト:
シンプレクティック多様体の自然な変換群としてハミルトン微分同相群が定義される。 この群上にはHofer距離と呼ばれる距離があるが、Hofer距離を評価するための道具の一つが呉-Schwarzスペクトル不変量である。

Hofer距離、呉-Schwarzスペクトル不変量はハミルトン微分同相群上のそれぞれ 共役不変ノルム、部分擬準同型というものになっている。 交換子長と擬準同型との間にはババア双対という関係が存在するが、共役不変ノルムと部分擬準同型の間にもある仮定の下で同様の関係が講演者により発見されている。

本講演では
・群上の共役不変ノルムと部分擬準同型についての一般論
・ハミルトン微分同相群上の共役不変ノルムと部分擬準同型とそのハミルトン力 学系への応用
について、講演者自身のいくつかの仕事に重点を置きつつ概説する。


日時:2016年7月15日(金)13:30-15:30
場所:学習院大学南4号館202号室
講演者:松下尚弘(京都大学理学研究科数学教室・日本学術振興会特別研究員PD)
講演題目:近傍複体の基本群について
アブストラクト:
単純グラフとは二重線およびループが存在しないグラフのことである.単純グラフの $n$ 彩色とは, グラフの頂点集合から $n$ 点集合への写像であって,辺で結ばれている頂点において異なる値を取るもののことである. 単純グラフ $G$ に対し, $G$ の $n$ 彩色が存在するような最小の $n$ を $G$ の彩色数といい,$\chi(G)$で表す. グラフの彩色数を決定する問題をグラフの彩色問題といい,グラフ理論において古典的に考えられてきた問題である.

グラフの彩色問題に代数トポロジーを初めて応用したのは Lov\'asz である. Lov\'asz はグラフに対し近傍複体という単体複体を対応させ, 近傍複体が $n$ 連結なら元のグラフの彩色数は $n+2$ より大きいことを示し, Kneser 予想を解決した.

本講演では,近傍複体の基本群の組合せ論的な表示について述べる. 正の整数$r$に対し,基点付きのグラフ$(G,v)$の$r$-基本群を定義する. これは離散的なグラフのループの集合を,適当な同値関係で割って得られる群である. $r$-基本群は偶数部分と呼ばれる自然な部分群を持ち,近傍複体の基本群は,$2$-基本群の偶数部分に同型である.


日時:2016年7月1日(金)13:30-15:30
場所:学習院大学南4号館202号室
講演者:三石史人(学習院大学理学部数学科)
講演題目:アレクサンドロフ空間の向きと基本類とその応用
アブストラクト:
「断面曲率が下に有界な完備リーマン多様体」を調べる過程で, その様な空間の一般化である「アレクサンドロフ空間」と呼ばれる距離空間が自然に現れます. 講演者はアレクサンドロフ空間の幾何学を理解する事に興味があります. アレクサンドロフ空間にまつわるトポロジカルな話題として次の事を時間の許す限り話す予定です.

(1) non-branching MCS-space と向きと基本類
アレクサンドロフ空間の underlying space は non-branching MCS-space と呼ばれる位相空間になる事が Perelman によって分かっています, 例えば, コンパクト連結閉多様体上の錐や, 二つのコンパクト連結閉多様体の結は non-branching MCS-spaces です. 講演者は non-branching MCS-space に対し, 自然に考えられる向きの概念がすべて同値 である事を証明しました. 特にコンパクトで連結な non-branching MCS-space は基本類を持つ事を示しました.

(2) 距離カレントのホモロジー
距離構造に依存するあるホモロジーが, アレクサンドロフ空間の持つ距離的の性質から, 位相不変量である事を示しました.

(3) アレクサンドロフ空間の filling radius 不等式
研究(1),(2)の応用として, Gromov がリーマン多様体について得ていた絶対的な不等式をアレクサンドロフ空間へ拡張しました.


日時:2016年6月10日(金)13:30-15:30
場所:学習院大学南4号館202号室
講演者:奥田喬之(東京大学大学院数理科学研究科)
講演題目:Sequences of degenerations of propeller surfaces and their splittings
アブストラクト:
リーマン面の退化族に現れる特異ファイバーは、 有限回の分裂変形によってレフシェッツファイバーか多重非特異ファイバーかの いずれかである特異ファイバー達の組に至ると予想されている。 本講演では特に、 プロペラ自己同型をモノドロミーに持つ特異ファイバーの分裂を考えたい。 プロペラ自己同型とは、種数gのリーマン面が持つ周期gの自己同型であって 2つ持つ固定点の周りで1/g,-1/g回転として作用するものである。 まず、そうしたプロペラモノドロミーを持つ特異ファイバーに対して、 (種数に依らない構成法に基づく)分裂変形の系列であって 最終的にレフシェッツファイバー達に至るものを与える。 さらにこれを用いることで、プロペラ自己同型のデーンツイストの積表示を与える。 この結果は、松本幸夫氏による種数g=2である場合の特異ファイバーの分裂と モノドロミーの積表示に関する結果の一般化にあたる。 なお、本研究は高村茂氏(京都大学)との共同研究である。


日時:2016年5月20日(金)13:30-15:30
場所:学習院大学南4号館202号室
講演者:浜田法行(東京大学大学院数理科学研究科)
講演題目: 松本の種数$2$レフシェッツ束にまつわる話題
アブストラクト:
$4$次元のトポロジカルなレフシェッツ束の研究の黎明期に, 松本幸夫氏によっ て種数$2$のレフシェッツ束で特異点が$8$個のものが構成された. その後の理論の発展にともなって, このレフシェッツ束は様々な形で応用され, その重要性が認知されていった. たとえば, Cadavid, Korkmazによって独立に)任意種数に一般化され, また, non-holomorphicなレフシェッツ束や与えられた任意有限表示群に対してそれを 基本群にもつレフシェッツ束の構成に利用された. 本講演では, このレフシェッツ束について最近さらに詳しくわかったこと, また 応用上もさらに有用であることを報告したい. 具体的には, このレフシェッツ束の切断, 非分岐有限被覆について述べ, これらを利用して, $T^4$, $T^2$上の$T^2$束(と同相な$4$次元多様体), $\mathbb{C} P^2$などにレフシェッツペンシルの構造を与えられることをみる. また種数$2$最小レフシェッツ束の構成にも利用できることを紹介する. 本講演は早野健太氏(慶應義塾大学)との共同研究を含む.


日時:2016年4月13日(水)13:30-15:30
場所:学習院大学南4号館205号室(前半)、403号室(後半)
講演者:松田能文(青山学院大学理工学部)
講演題目: 2次元軌道体群の円周への作用の有界オイラー数
アブストラクト:Burger,Iozzi,Wienhardは連結かつ向き付けられた有限型の穴あき曲面の基本群の 円周への作用に対して有界コホモロジーを用いて有界オイラー数を定義した.有界オイラー数を含む Milnor-Wood型の不等式が成立しその最大性はフックス作用を半共役を除いて特徴付ける. 被覆を考えることにより有界オイラー数の定義は2次元軌道体群の作用に対して拡張される. Milnor-Wood型の不等式およびフックス作用の特徴付けはこの場合にも成立する. この講演では,モジュラー群などのいくつかの2次元軌道体群のフックス作用の持ち上げが いつ有界オイラー数により特徴づけられるかについて記述する.

今後のセミナー予定