金沢大学・学習院大学合同トポロジーセミナー (Kanazawa-Gakushuin Topology Seminar)
(※※世話人:中村伊南沙)

今後のセミナー予定

過去のセミナー記録
2022年度
日時: 2022年12月8日(木)16:00-18:00
場所: 学習院大学南1号館204教室
講師:三松 佳彦 氏(中央大学)
講義題目:カスプ特異点の Milnor ファイバーの Lefschetz fibration
アブストラクト:
複素3変数の多項式 $g = x^p + y^q + z^r + xyz = 0$ が原点に定める特異点は $T_{pqr}$ 特異点と呼ばれ、 $1/p + 1/q + 1/r = 1$ の場合は単純楕円特異点、 $1/p + 1/q + 1/r < 1$ の場合はカスプ特異点と呼ばれるクラスの特異点を定める。
これらの特異点の Milnor ファイバーが正則ファイバーが $T^2$ となる Lefschetz fibration (LF) を許容することを中心に、動機やこの定理の応用、精密化などについて説明する。
そもそも、$S^5$ 上の正則 Poisson 構造(余次元 1 symplectic 葉層)の構成を `foliated Leschetz fibration' として証明しなおせないかという提案が 直接の動機であった。結果として正しい提案であるだけでなく、 興味深い幾つかの事実につながっていく。 まず、上に述べた LF は Lagrangan torus fibration にとることができる。 (そう思って構成した方が容易に構成できる。) また、Milnor fiber のエンドでには自然に$ S^1$ 上の $T^2 束$を境界として コンパクト化され、LF ごと拡張される。 例外的特異点の間に Arnold により見出された strange duality は 中村郁らによりカスプ特異点に移植されたが、その双対性による10組の $T_{pqr}$ 特異点の Milnor fibers は各々の LF を拡張した形でエンドで貼り合って K3 曲面と微分同相な閉4次元多様体上の LF となる。 これも大きな動機の一つであった。 Hirzebruch により構成された Hirzebruch-Inoue 曲面は自然に双対となる 二つのカスプ特異点を持つが、これらが上に述べた 10組のものであれば (その場合に限って)K3 曲面への flat deformation を許すことが 中村郁により示されているが、以上はその位相版とも解釈できそうである。
時間が許せば、Lefschetz-like 特異点についても述べたい。 「LF のような写像」が与えられたとき、その特異点が Lefschetz 型であることを 確認するのは難しい上に、確認できても実際に Lefschetz 型ではないことが しばしばである。LF を構成するための応用上有用な、より広い特異点のクラス (Lefschetz-like)を定義し、その場合に写像を LF に変形できる。
この講演は、粕谷直彦氏(北大)、児玉大樹氏(東北大/理研)、森淳秀氏(大阪歯大) との共同研究に基づく。