佐賀創発数理セミナー (Saga Souhatsu Mathematical Seminar)

JST創発的研究支援事業 研究課題名:トポロジーを用いたグラフの変形過程の解析と応用(研究代表者:中村伊南沙)の支援の下、 トポロジーとの関連を探しつつ、さまざまな分野の枠を超えたセミナーを行いたいと思います。 興味のある方は世話人までご連絡ください。

世話人(2024年度):中村伊南沙(佐賀大学)、Mihalache Serban Matei(佐賀大学)、石田哲也(佐賀大学)
(2023年度):中村伊南沙(佐賀大学)
連絡先:中村伊南沙 (inasaのあとにアットマークとcc.saga-u.ac.jpを付けてください)

金沢創発数理セミナー(2021年度、2022年度)

作成日:2023年4月13日
最終更新日:2024年9月27日



日時:2024年11月21日(木)16:00-17:30
場所:佐賀大学理工学部6号館205教室(Zoomによる遠隔とのハイブリッド)
講演者:中村 伊南沙(佐賀大学)
講演題目:
アブストラクト:


日時:2024年11月21日(木)14:00-15:30
場所:佐賀大学理工学部6号館205教室(Zoomによる遠隔とのハイブリッド)
講演者:志摩 亜希子 氏(東海大学)
講演題目:
アブストラクト:


日時:2024年11月18日(月)9:30-11:30
場所:佐賀大学理工学部6号館501大セミナー室(Zoomによる遠隔とのハイブリッド)
講演者:伊藤 昇 氏(信州大学)
講演題目:
アブストラクト:


日時:2024年10月29日(火)15:30-17:30
場所:佐賀大学理工学部6号館501大セミナー室(Zoomによる遠隔とのハイブリッド)
講演者:軽尾 浩晃 氏(学習院大学)
講演題目:スケイン代数の一般化の中心
アブストラクト:
スケイン代数とは, 有向曲面に対して定まる非可換代数であり, SL(2,$\mathbb{ C}$)指標多様体の量子化と見做せる対象である. このスケイン代数の一般化とし て, Mullerスケイン代数, Roger--Yangスケイン代数, これら2つを合わせたMRY スケイン代数の3種類がある. どれもタイヒミュラー空間・団代数と密接に関わ っており, その重要性は低次元トポロジーに留まらない. しかし, MRYスケイン 代数の導入はBloomquist--Karuo--L\^e (2023)によって初めてされており, その 代数構造や表現論はまだよく分かっていない. Brown--Goodearlをはじめとする 単一性定理の観点から, 表現論の理解において非可換代数の中心の理解は極めて 重要であり, 本講演の目標はMRYスケイン代数の中心を理解することである. こ こでのアイデアは, MRYスケイン代数がMullerスケイン代数の2次拡大と見做せる 代数であるという観点に基づく.
本講演の内容は, Han-Bom Moon (Fordham University), Helen Wong (Claremont McKenna College)との共同研究に基づく.


日時:2024年9月17日(火)16:10-17:40
場所:佐賀大学理工学部6号館501大セミナー室(Zoomによる遠隔とのハイブリッド)
講演者:野坂 武史 氏(東京工業大学 理学院数学系)
講演題目:Shadow Yang-Baxter equations and Alexander-Grobner invariants of links
アブストラクト:
braided set とは、集合的Yang Baxter方程式を満たす集合$X$であった。 当方程式は$R: X^2\rightarrow X^2$が満たす式であり、(少々条件を足す事で)birack や biquandle の一般化と見れる。 対し本研究では 3重直積である$R: X^3\rightarrow X^3$が同方程式を満たすものを講演者は考え、この$R$に"quasi-ribbon"でひねった彩色の双対を考える事で、絡み目不変量が構成できた。 その結果、Alexander多項式の一般化としてグレブナー基底を用いて、多変数多項式不変量を定義し、強そうな不変量であることを確かめた。 本講演では、構成法の詳細や幾つか計算例を紹介する。


日時:2024年9月17日(火)14:50-15:50
場所:佐賀大学理工学部6号館501大セミナー室(Zoomによる遠隔とのハイブリッド)
講演者:脇條 奈生子 氏(東京工業大学 理学院数学系)
講演題目:有向閉3 次元多様体のSL表現に関するライデマイスタートーション
アブストラクト: 捩れライデマイスタートーションとは、可微分多様体とその基本群の表現に対して定まる位相不変量である。本講では、閉3次元多様体のSL表現に関する捩れトーションについて、ヒーガード分解と“恒等子”を用いた計算手法と計算例を紹介する。また、随伴表現を用いて定義される捩れトーションを随伴トーションと呼び、双曲多様体の随伴トーションに関する“vanishing identity”という数理物理に由来する予想が知られている。境界付きの3次元多様体の場合には予想の肯定的例が幾つか知られていたが、本講演では境界がない場合の肯定的例として、8の字結び目に沿ったあるデーン手術で得られる閉3次元多様体について得られた結果を紹介する。


日時:2024年9月17日(火)10:00-11:00
場所:佐賀大学理工学部6号館501大セミナー室(Zoomによる遠隔とのハイブリッド)
講演者:柳田 幸輝 氏(東京工業大学 理学院数学系)
講演題目:Dijkgraaf-Witten invariant in topological K-theory
アブストラクト: Dijkgraaf-Witten不変量とは、常ホモロジー上で定義される位相的不変量であり、有限群と有向閉三次元多様体の組を与えるごとに値が定まる。 本研究では、Dijkgraaf-Witten不変量を模倣することで、K-ホモロジー上の新たな位相的不変量、KDW不変量を定義した。 一方で、KnappによってK-ホモロジーから表現環への単射準同型が構成されている。 講演者はこの単射準同型を用いて、 $\mathrm{PSL}_2 (\mathbb{F}_p)$とブリースコーンホモロジー球面の組にたいしてKDW不変量の計算結果を与えた。 これは基本群が非可換群となる多様体に対するDW不変量の初めての計算例である。 本講演では、KDW不変量の定義と計算結果について紹介する。


日時:2024年9月13日(金)16:00-17:00
場所:佐賀大学理工学部6号館501大セミナー室(Zoomによる遠隔とのハイブリッド)
講演者:中村 伊南沙(佐賀大学)
講演題目:結び目と曲面結び目、およびその応用について
アブストラクト:
トポロジーの非専門家に向け、結び目や曲面結び目の構成方法や性質、不変量、および応用例などについて基礎的なことを解説する。 さらに、曲面結び目の応用について議論したい。


日時:2024年9月13日(金)14:00-15:30
場所:佐賀大学理工学部6号館501大セミナー室(Zoomによる遠隔とのハイブリッド)
講演者:塩田 拓也 氏(宮崎大学フロンティア科学総合研究センター)
講演題目:微生物研究は数学の真理探究の題材となり得るか
アブストラクト:
生物は宇宙空間における物理現象や、化学反応に比べてばらつきが多く、数学的理解の対象として複雑である。ここでは、培養観察が容易な微生物に着目し、数学・数理解析の例を紹介する。微生物は、遺伝子の発現解析や操作、生体反応を担うタンパク質などの解析が容易であるため、比較的均質なサンプル調整が可能であるとともに遺伝子操作により条件を変化させた上での確認実験なども容易に行える特徴を持つ。本講演では、微生物の増殖、生死、成長、遊泳といった現象について生命科学者と数学者がどのように連携して解析したかを紹介する。加えて、より複雑な現象である、微生物の環境変容現象について説明し、これを数学的知見を持って解析できるかどうかについて議論したい。


日時:2024年9月6日(金)15:30-17:30
場所:佐賀大学理工学部6号館501大セミナー室(Zoomによる遠隔とのハイブリッド)
講演者:浅野 知紘 氏(京都大学数理解析研究所)
講演題目:ラグランジュ部分多様体の空間の層理論的研究
アブストラクト:
シンプレクティック幾何において、滑らかさのない極限的な対象に対しても保たれる性質たちが知られている。 極限的な対象を扱うために、距離に関する抽象的な完備化(コーシー列の同値類の空間)を扱うことがあるが、これは多くの場合に調べやすい対象ではない。 Viterboはラグランジュ部分多様体のなす空間の$\gamma$距離と呼ばれる距離に関する完備化の元に対して、その元の性質を反映するシンプレクティック多様体の部分集合を定義し、$\gamma$台と名付けた。
本講演では、シンプレクティック多様体が余接束である場合に、$\gamma$台が層理論的な記述を持ち、層理論的観点から完備化や$\gamma$台を研究できることを紹介する。 本研究はStephane Guillermou氏、Vincent Humiliere氏、池祐一氏、Claude Viterbo氏との共同研究に基づく.


日時:2024年8月9日(金)15:30-17:30
場所:佐賀大学理工学部6号館501大セミナー室(Zoomによる遠隔とのハイブリッド)
講演者:姫野 圭佑 氏(広島大学 大学大学院先進理工系科学研究科 )
講演題目:knot Floer homology理論とUpsilon不変量
アブストラクト:
knot Floer homologyは3次元多様体内の結び目の不変量であり,結び目理論において様々な利益をもたらしてきた. 特に,knot Floer homology理論からUpsilon不変量と呼ばれるコンコーダンス不変量が得られる.それは連続で区分線型な閉区間[0,2]上の関数であり,同じくknot Floer homology理論由来のTau型コンコーダンス不変量の一般化である.BorodzikとHeddenは「Upsilon不変量が下に凸な関数になる結び目のクラスはどのようなものか」という問いを与えており,その関数としてのグラフの形状にも関心が集まりつつある.
本講演では,knot Floer homologyについての基礎,Upsilon不変量の計算方法を説明したのち,得られた結果を紹介する.


日時:2024年8月1日(木)15:30-17:30
場所:佐賀大学理工学部6号館310講義室(Zoomによる遠隔とのハイブリッド)
講演者:高橋 典寿 氏(立命館大学理工学部)
講演題目:有向閉曲面上の有限群作用の構成とそのデーンツイスト表示
アブストラクト:
種数が2以上の有向閉曲面の写像類群の有限部分群は,位数の等しいその曲面の微分同相群の有限部分群で実現されることがKerckhoffによって示された.また,Dehn-Nielsen-Baerの定理により,写像類群は基本群の外部自己同型群の指数2の部分群と一対一に対応する.
本講演では,有向閉曲面の写像類群の有限巡回部分群作用に対しその基本領域への曲面の分割を与えることで,有限巡回群およびデーンツイストの基本群への作用を可視化する.さらに,それらを組み合わせることで,考える有限巡回群作用のデーンツイスト表示を計算する.
本研究は野澤啓氏(立命館大学)との共同研究に基づく.


日時:2024年7月30日(火)15:30-17:30
場所:佐賀大学理工学部6号館310講義室(Zoomによる遠隔とのハイブリッド)
講演者:宋 珠愛 氏(京都大学)
講演題目:Geometry over finitely generated semifields over the tropical semifield
アブストラクト:
トロピカル幾何とは、一言で述べるなら、トロピカル半体T=(R∪{-∞}, max, +)上の代数幾何である。しかし、現状スタンダードと呼べる枠組みは出来上がっていないように思われる。
そのような枠組みの一つの提案とするべく、講演者はここ一年半ほどに渡り、T上有限生成な半体に着目し、これらのT代数構造から幾何を構築してきた。有限生成T代数から幾何を構築する方法に比べ、割り算が存在する理由から、より深く、より綺麗で扱いやすい結果を得られたので、それらを紹介・説明する。また、抽象トロピカル曲線の有理関数半体について代数と幾何の対応に着目しながらこれまで得られた結果を説明することで、高次元化が期待されることも述べる。


日時:2024年7月12日(金)10:30-12:30
場所:佐賀大学理工学部6号館501大セミナー室(Zoomによる遠隔とのハイブリッド)
講演者:北澤 直樹 氏(九州大学マス・フォア・インダストリ研究所)
講演題目:与えられたグラフを Reeb グラフとするような可微分関数・実代数関数の再構成
アブストラクト:
可微分関数の Reeb グラフは、逆像の成分全体からなる自然な空間である。Morse 関数の理論の文脈の中で、Reeb らの研究で 1940 年代に登場以来、多様体を大域的に、簡略化して捉える重要な道具である。近年では、可視化等、応用上も重要な役割を担う。ある程度野性的でない関数に対しては、臨界点を含むような成分を表す点を頂点としたグラフになる : 一般的な定理として 2020 年代に”佐伯 修 氏(九州大学)”により示された。
今回、Sharko が 2000 年代初頭に提案した問題”与えられたグラフを Reeb グラフとする良い関数を再構成できるか”に関連した、初期の研究、最近の講演者の研究等紹介する(注意: 定義域多様体は前もって固定しないことが多い)。初期から最近まで、「閉曲面上の Morse 関数や局所的に多項式で表現できる関数を、全てあるいは適当な条件をみたす有限グラフに対し再構成した。」という形の結果が多く発表されている。講演者は次元 3 の閉多様体上の所謂 Morse-Bott 関数を適切に一般化した関数を、逆像の曲面を先に指定して再構成すること [N. Kitazawa, On Reeb graphs induced from smooth functions on $3$-dimensional closed manifolds with finitely many singular values, Topological Methods in Nonlinear Analysis Vol. 59 No. 2B (2022), 897--912] 等に成功した。最近では実代数のカテゴリーで構成できるか考え、単位球面の自然な高さ関数等を一般化したような関数の族を式表示や Reeb グラフと共に得た [N. Kitazawa, Real algebraic functions on closed manifolds whose Reen graphs are given graphs, Methods of Functional Analysis and Topology Vol. 28 No. 4 (2022), 302--308, 2023]。


日時:2024年6月18日(火)15:30-17:30
場所:佐賀大学理工学部6号館310講義室(Zoomによる遠隔とのハイブリッド)
講演者:小菅 亮太朗 氏(東京大学大学院数理科学研究科)
講演題目:高次元の多様体の写像類群のねじれ1-コサイクルとその幾何的構成
アブストラクト:
2次元の多様体である曲面の写像類群の(コ)ホモロジーは、曲面束の特性類やモジュライ空間の幾何など、 さまざまな背景を基に盛んに研究されている対象である。 これに比べると、高次元多様体の写像類群の研究は、低次元の場合や特定の多様体の場合、 あるいはシンプレクティック構造などの付加的な構造を備えた場合などを中心に行われているが、 曲面の場合に比べてやや散発的である。今回の講演では、3次元以上の多様体で基本群の中心が自明となる場合において、 その多様体の(コ)ホモロジーを係数とするいくつかの写像類群の1-コサイクルとその構成について話す。


日時:2024年6月11日(火)15:30-17:30
場所:佐賀大学理工学部6号館310講義室(Zoomによる遠隔とのハイブリッド)
講演者:片田 舞 氏(九州大学数理学研究院)
講演題目:ヤコビ図の空間を係数に持つ自由群のIA-自己同型群の1次ホモロジー
アブストラクト:
自由群の自己同型群の部分群としてIA-自己同型群と呼ばれるものがあり、近年その有理(コ)ホモロジーの代数構造の研究がなされてきた。 この講演では、非自明な係数を持つIA-自己同型群のホモロジーを考える。ヤコビ図の空間は、絡み目のKontsevich不変量が値をもつ空間として登場する。 我々は、ヤコビ図の空間に対して、自由群の自己同型群上の加群構造を与えた。 この加群構造に関する結果を交えながら、ヤコビ図の空間を係数に持つIA-自己同型群の1次ホモロジーを計算する。


日時:2024年5月14日(火)15:30-17:30
場所:佐賀大学理工学部6号館310講義室(Zoomによる遠隔とのハイブリッド)
講演者:Mihalache Serban Matei 氏(佐賀大学)
講演題目:Kuperberg不変量とCGPT不変量の同値性について
アブストラクト:
Kuperberg不変量は1997年に G. Kuperbergによって導入された, 有限次元Hopf代数を用いたフレーミング付き3次元多様体の不変量である. 一方でCGPT不変量は2018年にF. Costantino, N. Geer, B. Patureau-Mirand, V. Turaevらによって導入された3次元多様体の位相不変量であり, pivotal圏上のmodified traceの理論を用いて不変量を構成している. またunibalanced unimodular pivotal Hopf代数と呼ばれるクラスの代数からmodified traceを持ったpivotal圏が得られることが証明されており, Costantinoらはこの場合にCGPT不変量とKuperberg不変量の関係について予想を立てている.
本発表ではKuperberg不変量とCGPT不変量を紹介し, 時間が余ればこれらの不変量の同値性に関する発表者の結果について紹介する.


日時:2024年3月21日(木)15:30-17:30
場所:佐賀大学理工学部6号館501大セミナー室(Zoomによる遠隔とのハイブリッド)
講演者:軽尾 浩晃 氏(学習院大学)
講演題目:境界付き3次元多様体のスケイン加群の有限性予想
アブストラクト:
スケイン加群とは有向3次元多様体に対して定義される加群で あり, 指標多様体や位相的量子場の理論と密接に関わる対象である. 近年, Wittenの有限性予想がGunningham--Jordan--Safronovによって解決された. この 有限性予想は閉3次元多様体のスケイン加群が有理関数体上の有限生成加群であ ることを主張するものである. 一方, Detcherryによって境界付き3次元多様体へ の一般化がされており, これは有向3次元多様体のスケイン加群が境界のスケイ ン代数上で有限生成であるという予想である. 境界周りのスケインも考えなければならないという点がこの予想をより難しいも のにしており, 先行研究では特殊な多様体族に対してしか解決されていない. 本講演では, この一般化をハンドル体を用いて再定式化し, その再定式化を用い ていくつかの多様体族に対して予想を解決する. 特に, 先行研究における境界は トーラスの非交和のみであったが, 我々は種数2の閉曲面を境界に持つ多様体族 に対しても予想を解決したというのが大きな進展である. 本研究はZhihao Wang (Nanyang Technological University and University of Groningen)との共同研究に基づく.


日時:2024年3月1日(金)16:30-17:30
場所:佐賀大学理工学部6号館501大セミナー室(Zoomによる遠隔とのハイブリッド)
講演者:石田 哲也 氏(佐賀大学)
講演題目:局所イプシロン予想とp進微分方程式
アブストラクト:
局所イプシロン予想は、p進数体の絶対ガロア群のp進表現に対し加藤和也氏が提起した予想で、ゼータ元に対する関数等式を定式化するのに重要な予想です。 中村健太郎氏はこの予想を、p進表現の一般化であるRobba環上のファイガンマ加群に対して定式化しました。 中村氏の予想は、de Rhamなファイガンマ加群に対して、de Rham性から定義される様々な不変量を組み合わせて得られる局所イプシロン同型と呼ばれる同型が、de Rhamとは限らない任意のファイガンマ加群に対しても整合的に存在することを主張します。
この一般化された予想とp進微分方程式との関係に関して、次のような結果を得ました。 de Rhamなファイガンマ加群Mに対して、Laurent Berger氏により定義されたp進微分方程式Nを考えます。 Mの円分変形族とNの円分変形族という二種類のファイガンマ加群の族について、前者の族と後者の族に対する局所イプシロン同型の存在は同値であることがわかりました。 この関係性は従来のPerrin-Riou理論における大指数写像の補完公式を精密化・一般化する結果となっています。
この結果についての概要を発表したいと思います。 発表内容は、中村健太郎氏との共同研究に基づきます。


日時:2024年1月30日(火)16:30-17:30
場所:佐賀大学理工学部6号館501大セミナー室(Zoomによる遠隔とのハイブリッド)
講演者:河内 明夫 氏(大阪公立大学数学研究所)
講演題目:Classical Poincare conjecture via 4D topology
(4Dトポロジーを経由した古典的ポアンカレ予想)
アブストラクト:
The classical Poincare conjecture that every homotopy 3-sphere is diffeomorphic to the 3-sphere is confirmed by Perelman in arXiv papers solving Thurston's program on geometrizations of 3-manifolds. A new confirmation of this conjecture is given by a method of 4D topology. For this proof, the spun torus-knot of every knot in every homotopy 3-sphere is observed to be a ribbon torus-knot in the 4-sphere, where Smooth Unknotting Conjecture for a surface-link, Smooth 4D Poincare Conjecture and the ribbonness of a surface-link with free fundamental group are used. By examining a disk-chord system of a ribbon solid torus bounded by the spun torus-knot, it is proved that the knot belongs to a 3-ball in the homotopy 3-sphere. Then by Bing's old result, it is confirmed that the homotopy 3-sphere is diffeomorphic to the 3-sphere. As a by-product, it is proved that the crossing number of a knot in the 3-sphere is equal to the ribbon number of the spun torus-knot in the 4-sphere.


日時:2023年12月5日(火)15:30-17:30
場所:佐賀大学理工学部6号館501大セミナー室(Zoomによる遠隔とのハイブリッド)
講演者:磯島 司 氏(東京工業大学)
講演題目:Infinitely many standard trisection diagrams for Gluck twisting
アブストラクト:
GayとKirbyによって2012年に導入された4次元多様体のtrisectionとは、4次元多様体の、3つの4次元の1ハンドル体による分解のことを言い、 3次元多様体の分解であるHeegaard分解の4次元的類似と見做せる。 trisectionには、「4次元球面の任意のtrisectionは種数0のtrisectionの安定化にisotopicだろう」という予想があり、 これは、3次元球面の各種数におけるHeegaard分解が一意的であることを主張するWaldhausenの定理の4次元的類似であることから、 4次元のWaldhausen予想と呼ばれている。
Heegaard分解の様子を表すHeegaard図式があるように、trisectionにも、その分解を表す図式であるtrisection図式がある。 2つの4次元閉多様体が微分同相であることの必要十分条件は、それらに対応するtrisection図式が 曲面の微分同相、同族曲線間のハンドルスライド、安定化の有限列で移り合うことである。 GayとMeierは、4次元球面に微分同相なGluck twisted 4-manifoldのあるtrisection図式が、安定化を用いずに種数0のtrisection図式に移り合うか? という問題を提出した。これは、4次元のWaldhausen予想の特別な場合に該当する。
本講演では、spun (p+1,p)-torus knot上のGluck twisted 4-manifoldの場合にこの問題に対して肯定的解答を与えたことを紹介する。 ここで、pは2以上の任意の整数である。本講演は、次のプレプリントの内容に基づく:https://arxiv.org/abs/2309.06778


日時:2023年11月29日(水)15:30-17:30
場所:佐賀大学理工学部6号館501大セミナー室
講演者:門上 晃久 氏(金沢大学理工研究域)
講演題目:A generalization of the link-symmetric group
アブストラクト:
J.Hillman は、link に対して link-symmetric group を定義した。 これはもろ手性と可逆性を包含する概念である。これまで得られた結果を 紹介しつつ、この概念を任意の空間対に拡張する。特に、2-link、virtual link、multi-component spatial graph 等に対して定義できる。 今後これらの対称性を調べることを目標とする。


日時:2023年11月22日(水)15:30-17:30
場所:佐賀大学理工学部6号館501大セミナー室(Zoomによる遠隔とのハイブリッド)
講演者:谷口 雄大 氏(大阪大学大学院理学研究科)
講演題目:曲面結び目の結び目カンドル
アブストラクト:
カンドルとは Joyce と Matveev によって独立に導入された結び目理論と相性の良い代数系である. $n+2$ 次元球面 $S^{n+2}$ 内に埋め込まれた連結な有向閉 $n$ 次元多様体 $M$ が与えられると, $M$ の結び目カンドルと呼ばれるカンドルが定義される. $n=1$ の場合の結び目カンドルは現在までに様々な研究が行われてきた一方で, $n\geq 2$ の場合の結び目カンドルの研究はそう多くない. 本講演ではカンドルと結び目カンドルの基本事項を述べた後に $n=2$の場合,すなわち曲面結び目の結び目カンドルについて講演者が得られた結果を紹介する. 本講演の内容は田中心氏 (東京学芸大)との共同研究を含む.


日時:2023年11月14日(火)15:30-17:30
場所:佐賀大学理工学部6号館501大セミナー室(Zoomによる遠隔とのハイブリッド)
講演者:浅野 知紘 氏(京都大学数理解析研究所)
講演題目:余接束における ``重い" 集合への層理論的アプローチ
アブストラクト:
Tamarkinは超局所層理論を用いてハミルトニアンアイソトピーに関する分離不可能性 を証明する手法を与えた。一方で、Entov-Polterovichは、分離不可能性を導くより 精密な概念として、 ``heavy(重い)" 集合と ``superheavy(とても重い)" 集合の概 念を導入した。
本講演では、余接束において ``heaviness" や ``superheaviness" の概念を超局所 層理論的に見直し、それらを判定するための層理論的な必要条件や十分条件を例を交 えながら紹介する。


日時:2023年10月24日(火)15:30-17:30
場所:佐賀大学理工学部6号館501大セミナー室(Zoomによる遠隔とのハイブリッド)
講演者:高野 暁弘 氏(東京大学大学院数理科学研究科)
講演題目:The p-colorable subgroup of Thompson's group F
アブストラクト:
近年、JonesはThompson群Fのユニタリ表現に関する研究を行い、その中でFの元から絡み目を構成する方法を導入した。これによりThompson群と結び目理論との関係が構築された(AielloはこれをThompson knot theoryと呼んでいる)。この理論は組み紐群の類似と呼べるものであり、Jonesはその結果の1つとして、Alexanderの定理を証明した。つまり、任意の絡み目はFのある元から得られる。一方、Markovの定理は現在のところ証明されていない。
さて、Jonesは自身が構成したFの表現のあるstabilizerとして、いくつかの部分群を定義した。そのうちの一つは3彩色可能部分群と呼ばれ、我々はこの部分群の非自明な元から得られる絡み目は全て3彩色可能であることを示した。本講演では、この結果を3以上の奇数pに対して拡張する。すなわち、p彩色可能部分群を定義し、その群の非自明な元から得られる絡み目は全てp彩色可能であることを示す。また、その部分群は、Fのある一般化であるBrown-Thompson群と同型であることも示す。本研究は、児玉悠弥氏(東京都立大)との共同研究である。


日時:2023年10月3日(火)15:30-17:30
場所:佐賀大学理工学部6号館501大セミナー室(Zoomによる遠隔とのハイブリッド)
講演者:安田 順平 氏(大阪大学大学院 理学研究科 数学専攻)
講演題目:曲面絡み目のプラット表示とその応用
アブストラクト:
ブレイドを用いて絡み目を表示する手法として、閉ブレイド表示とプラット表示の2つが知られている。閉ブレイド表示は向き付けられた(有向)絡み目の、そしてプラット表示は向きの付いていない(無向)絡み目の表示方法として有効である。
曲面絡み目とは4次元空間へ埋め込まれた閉曲面である。ブレイドの高次元化として、ブレイド状曲面と2次元ブレイド(曲面ブレイド)が知られている。ブレイド状曲面は4次元球体へ適切に埋め込まれた曲面であって円板上の分岐被覆曲面の構造を持つものであり、さらに境界成分が自明であるとき2次元ブレイドという。Viro氏、鎌田氏は2次元ブレイドを用いて有向曲面絡み目の閉ブレイド表示を導入した。
本講演ではブレイド状曲面を用いて無向曲面絡み目のプラット表示を導入する。これにより向き付け不可能な曲面絡み目をブレイド状曲面で表示することが可能となる。
講演の後半では、曲面絡み目の不変量の考察を行う。曲面絡み目のプラット表示を用いることで、プラット指数と呼ばれる不変量が得られる。これは絡み目における橋指数の類似である。プラット指数の値が小さい曲面絡み目について特徴付けを与える。
ブレイド状曲面はチャートと呼ばれる円板上のグラフによって記述することができる。チャートを用いて曲面絡み目の結び目群や結び目対称カンドルが計算できることを紹介する。また時間が許せば、プラット表示で得られた向き付け不可能曲面絡み目の族とその性質について併せて紹介する。
前半と後半の内容は、それぞれプレプリント (https://arxiv.org/abs/2105.08634) と (https://arxiv.org/abs/2308.14488) の内容に基づく。


日時:2023年9月7日(木)16:00-17:30
場所:佐賀大学理工学部6号館501大セミナー室(Zoomによる遠隔とのハイブリッド)
講演者:中村 伊南沙(佐賀大学)
講演題目:BMW代数の生成元を用いた曲面の構成について
アブストラクト:
BMW代数は生成元としてブレイドの標準的な生成元と「フック」をもつ。 BMWタングルはBMW代数の生成元から構成されるタングルである。 曲面ブレイドはブレイドの変形として表されるが、その類似として BMWタングルの変形として構成される曲面、BMW曲面を考える。 さらに曲面ブレイドのチャート表示の類似として、BMWチャート表示を提案し、 BMW曲面はBMWチャート表示を与え、 BMWチャート表示からBMW曲面が定まることを示す。


日時:2023年9月7日(木)13:30-15:30
場所:佐賀大学理工学部6号館501大セミナー室(Zoomによる遠隔とのハイブリッド)
講演者:志摩 亜希子 氏(東海大学)
講演題目:Distinguishing surface-links with 4-charts with 2 crossings and 8 black vertices
アブストラクト:
4次元空間に埋め込まれた曲面(曲面絡み目)を調べるために、円板上のチャートと呼ばれるグラフが鎌田氏によって定義さました。チャートには3種類の頂点、次数1の頂点(black vertex)、次数4の頂点(crossing)、次数6の頂点(white vertex)があります。これらの頂点の数が小さい順に並べて、曲面絡み目の表を作成しようと私達は研究を続けています。
C-move と呼ばれるチャートの間の変形が定義されていて、これらの変形によってチャートを変形しても、チャートが表す曲面絡み目のイソトピークラスを変えないことが知られています。crossing が1個以下のチャートは C-move によって、white vertex も crossing もないチャート(リボンチャート)に変形できることが示されています。
今回の講演では、crossing の数が2個、black vertex の数が8個をもつチャートについて調べた内容について話します。これらのチャートが表す曲面絡み目は、連結成分が、1つか2つの場合があります。連結成分が2つの場合について、quandle coloring を用いることにより、これらのチャートが表す曲面絡み目が互いに同値でないことが示せました。ここで、使用した quandle は、次のような quandle (Q,*)です。
=========
N を 3以上の自然数とします。Q={1,2,...,N} とします。 演算 $*$ を次のように定義します。 もし y≠N ならば、x*y =x とし、 x≠N-1, x≠N ならば、 x*N =x+1 とし、 (N-1)*N =1、N*N =N と定めます。
==========
今回の内容は、preprint (http://arxiv.org/abs/2304.05532) の内容であり、東海大学の永瀬輝男氏との共同研究です。


日時:2023年9月6日(水)10:00-12:00
場所:佐賀大学理工学部6号館501大セミナー室(Zoomによる遠隔とのハイブリッド)
講演者:松谷 茂樹 氏(金沢大学)
講演題目:一般の閉リーマン面上のワィエルシュトラスσ関数の代数的構成
アブストラクト:
ワィエルシュトラスの楕円関数論をそのまま一般の閉リーマン面へ拡張し,アーベル関数論を代数的に構成したものが昨年,完成したので,本講演ではその構成法についてその概略を述べる.
ワェイルシュトラスの楕円関数論が標準形で記述された曲線から出発するように,この構成においても,代数曲線$X$をワィエルシュトラス標準形と知られるアファイン曲線に限定する.この標準形及び曲線は一般の閉リーマン面を表現可能なことが知られており,また,数値半群により多くの特徴が定まることが知られている.アファイン曲線の座標環$R_X$の数値半群から定まる加群に着目し,その相補加群を同定することで,デデキントの差積定理により,第一種微分,第二種微分,第三種微分を構築できる.これらを使うことで,曲線$X$に関わる楕円関数論と同様に一般の閉リーマン面に対するσ関数が構成でき,ヤコビの逆問題が解かれることになる.
講演ではワィエルシュトラスの楕円関数論を概観した後に,それらの拡張として上記の構成について述べる.
また,ヤコビの逆問題を通して,ヤコビ多様体上の有理型関数は曲線上の有理型関数で明示的に記述されることができるようになる.これにより従来楕円関数でしかできないと思われていた幾つかの計算が高次種数の有理型関数に対しても具体的に記述できることとなった.これらの結果に関しても時間があれば触れる.


日時:2023年8月8日(火)15:30-17:30
場所:佐賀大学理工学部6号館501大セミナー室(Zoomによる遠隔とのハイブリッド)
講演者:山ア 晃司 氏(佐賀大学)
講演題目:1次元C^1級エタールLie亜群のGodbillon-Vey類
アブストラクト:
余次元1の葉層の不変量として,Godbillon-Vey類が知られている.これはde Rhamコホモロジー類であり,通常はC^2級の葉層に対して定義される.HurderとLangevinは,C^1級の葉層に対して,Godbillon-Vey類の一般化としてGodbillon-Vey測度というものを定義している.一方,CrainicとMoerdijkらの研究により,Godbillon-Vey類は本質的には1次元エタールLie亜群の不変量と解釈できることが知られている.
講演では1次元C^1級エタールLie亜群のGodbillon-Vey類の定義を目指す.そのため,1次元C^0級エタールLie亜群上の1次元実ベクトル束のGodbillon-Vey類を定義し,特に接束のGodbillon-Vey類を古典的なGodbillon-Vey類と解釈する.


日時:2023年7月3日(月)15:30-17:30
場所:佐賀大学理工学部6号館501大セミナー室(Zoomによる遠隔とのハイブリッド)
講演者:吉田 建一 氏(広島大学)
講演題目:ネットワークによる弾塑性のモデル化
アブストラクト:
熱可塑性エラストマー(thermoplastic elastomer (TPE)) とは、ゴム弾性を示し、高温で塑性変形する高分子材料である。本講演では、周期的グラフを利用したTPEの弾塑性変形のモデル化についての結果を紹介する。TPEはゴム弾性を示すソフトドメインと架橋点として機能するハードドメインからなり、この構造をグラフによって表すことができる。そこで、周期的に実現されたグラフに対し、テンションテンソルという大域的な歪み方を表す量を定義し、材料の応力と弾性に対応することを示す。また、TPEのハードドメインは加硫によってできる通常のゴムよりも壊れやすい。このことを表すため、大域的な変形によってグラフのトポロジーが変化するモデルを与えて、塑性を記述する。このモデルを利用して、材料の混合によって頑丈な材料が得られる傾向にあることや、異方性のあるネットワークによって永久ひずみに関して興味深い材料が考えられることについても説明したい。本講演は児玉大樹氏、阪田直樹氏、下川航也氏との共同研究に基づく。


日時:2023年6月20(火)16:20-18:00
場所:佐賀大学理工学部6号館310講義室
講演者:米澤 康好 氏(Quantinuum・量子ソフトウェア アウトリーチ オフィサー/大阪公立大学数学研究所)
講演題目:量子コンピュータとトポロジー
================
16:20-17:20 量子コンピュータ概要
17:30-18:00 量子コンピューティングとトポロジー
($*$ 講演の構成を変更しました。6/15)
================
アブストラクト:
皆さんスマートフォンはお持ちですか? 1946年に1秒間に5000回の演算を行うことが可能な計算機ENIAC(Electronic Numerical Integrator and Computer)が公開されました。 この計算機のサイズは、幅24m×高さ2.5mもあり、Giant Brainという異名を持ち合わせていました。 現在、1秒間に20億回以上の演算可能なチップが1つまたは2つ入った小さな箱(スマートフォン)を、誰でも手にできる時代になりました。 しかし、現在のスーパーコンピュータでも解けない課題はあり、この解決に量子コンピュータが利用できると期待しています。
本講演では量子コンピュータの現状や課題をお伝えし、トポロジストが興味を持ちそうな量子コンピュータの課題(講演者の主観)についてお話しいたします。


日時:2023年5月25日(木)14:40-16:40
場所:佐賀大学理工学部6号館501大セミナー室
講演者:滝岡 英雄 氏(佐賀大学)
講演題目:絡み目の$S_m^N$交差交換と多項式不変量
アブストラクト:
2変数v,zの多項式不変量のHOMFLYPT多項式が一致する結び目の無限族は金信泰造氏によって発見されている. しかし, 2変数a,zの多項式不変量のKauffman多項式が一致する結び目の無限族は未だ知られていない. 本研究では, これら2変数多項式不変量の変数zで整理したときの係数多項式に注目する. 河内明夫氏の結果やそれとは異なる手法での宮澤康行氏の結果で, HOMFLYPT多項式に関しては, 任意のsに対して, 任意の絡み目の0番からs番までの係数多項式が一致する絡み目の無限族が構成されている. 本講演では, HOMFLYPT多項式とKauffman多項式のそれぞれの場合に, そのような絡み目の無限族が存在することをS_m^N交差交換を導入することで示す.


佐賀大学